【本記事を読むと・・・】
・超ホットなトピック「選択的夫婦別姓」がどうして賛否両論なのかが丸分かり!
・対談形式だから、堅苦しい記事よりも簡単に理解できる!
・明日すぐに話したくなるような、選択的夫婦別姓に関する面白いアイデアがたくさん出てくる!
「苗字がひとつになった日も」
Official髭男dismの曲『115万キロのフィルム』の一節だ。この歌詞は結婚を美しく表現している。しかし、未来の子供たちはこの文章を見ても結婚を連想しないかもしれない。
昨今、選択的夫婦別姓がリアル・バーチャル問わずホットなトピックとなっている。果たして、この制度を実現させていいのか。今回も、「WILLY NILLY」編集長の仁大ばなしと教育系YouTuber・Shunが激論を交わす!
(文=仁大ばなし)
苗字をどのように捉えている?
本日の対談テーマは「選択的夫婦別姓の是非」についてでございます。
そして、今回も教育系YouTuberのShun君をお招きしております。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
最近「選択的夫婦別姓」の問題が非常にホットなんです。
昨年末に、第五次男女共同参画基本計画なるものが閣議決定されました。主な内容は、男女平等にしましょうね〜というものです。しかし、問題なのは、実際に決定される時に元々盛り込まれていた選択的夫婦別姓の推進に関する項目が削除されていたことです。
これを新たな契機に、Twitterやらテレビやらでこの問題が頻繁に議論されるようになったわけです。なので、我々も今回、この問題について激論していきたいと思います。
頑張ってきましょう!
はい!Shun君自身は「選択的夫婦別姓」に対して、全面的に賛成なんですよね?
うん。そうですね。
僕は少し微妙な立ち位置でして、完全には賛成できないなと思っています。
部分的な反対ということですね。
そうなりますね。
早速議論に入っていきたいんですが、その前に僕たち自身が「苗字」をどのように捉えているのかを共有しておきましょう。Shun君は自身の苗字をどう認識していますか?
前回の対談でも多少触れたんですが、僕の苗字は「興梠(コオロギ)」という変わったやつなんです。なので、一言でいうならば、苗字はアイデンティティだと思っています。
なるほど。
アイデンティティですか。では、例えば結婚する相手がどうしても苗字を変えたくないと主張してきたらどうしますか。アイデンティティという側面を抑えてでも、自分の苗字を相手方に合わせるというのは許容できますか?
僕が奥さんの苗字をもらうということですか?
そうです。佐藤さんと結婚して「佐藤俊」になるということです。
それはちょっと嫌ですね。
嫌なんですね。
もし、このように苗字に関して奥さんとぶつかったら、その結婚はどうなるんですか。夫婦別姓が実現されていない状況で、向こうがどうしても佐藤のままでいたくて、Shun君はどうしても興梠のままでいたいとなったらどうしますか?
それはだいぶ考えますね。
結婚そのものに関わってくる重要な問題ということですね。
好きだったら結婚はすると思うんですが、違和感を覚える部分はありますね。
なるほど。自分の苗字を変えることには、あまり前向きではないと。
付け足すんだったら良いんですがね。興梠佐藤俊といった感じに。
並びがいかついですね(笑)
仁大さんは苗字をどう捉えているんですか?
僕は正直、自分の苗字に一切の執着はありません。
ええ?!
仮に佐藤さんと結婚することになったとして、苗字をそちら側に変更することは僕にとって何ら問題はありません。S
hun君の興梠という苗字はかなりレアじゃないですか。
しかし、僕のリアル苗字である杉山はそこまで珍しくないと思います。なので、この苗字じゃないと自分じゃないみたいなアイデンティティ性は一切無いんですよ。
そうなんですか。面白いですね。
夫婦別姓は「表現の自由」だ!
さて、Shun君が語ってくれたように、現行の結婚システムはどちらかの苗字に合わせなければならないため、何かしらのコンフリクトを生む可能性があります。
そうした中で、Shun君は選択的夫婦別姓に賛成ということなんですが、それを支えるいくつかの理由を述べていただけますでしょうか。
僕が選択的夫婦別姓である理由は三つあります。
一つ目は「夫婦別姓自体が表現の自由だから」。
二つ目は「女性の社会進出に不可欠だから」。
三つ目は「諸外国では夫婦別姓は当たり前だから」。
これらが僕の意見です。
一つずつ見ていきたいと思うんですが「表現の自由」というのはどういった観点からですか?
これはもうシンプルです。
僕は苗字を名乗ること自体が自身の表現であると思っています。
例えば、田中さんが結婚するとなって、急に佐藤に苗字が変わってしまったとします。そうすると、これまで職場で田中さんと呼ばれていたのに途端に佐藤さんになってしまうのです。
これはある意味でキャラクター性が失われたとも言えます。好きだから結婚するとは思いますが、それでも自己表現の自由を奪ってしまうのは、いかがなものかと感じています。
なるほど。
つまり、アート的な表現の自由というよりも、自分自身を表す属性としての苗字が急に変えられてしまうことが、表現の自由を侵害しているのではないか、ということですね。
そうです。
この部分に関しては異論ないです。
僕は苗字が変わってもいいと思っていますが、みんながみんなそうではないですからね。自分の苗字にすごく愛着を持っている人だって多くいるだろうし、相手が好きだからとか、結婚だからという理由で苗字を取り上げるのは必ずしもOKとされることではないですね。
苗字の決定は「レア度バトル制」にしろ!
二つ目は「女性の社会進出」に関する理由でしたね。
そうですね。
女性の権利に関してデータを持ってきました。平成23年度の研究で、国内企業3,700社のうち、65%は仕事場における旧姓の使用を認めているんです。
これから世の中の女性が強くなっていくのは自然の流れだと思いますし、それに付随して発生している選択的夫婦別姓の問題に関しては僕は全面的に賛成です。
なるほど。
ただ、僕はそうした見方自体に潜在的な偏見が含まれていると考えています。
どういうことですか?
そもそもこの問題の根源は「結婚するときにどちらかの苗字に合わせなければならない」という結婚制度にあります。
つまり、この点に関して言えば、男性側に苗字を合わせることも、女性側に苗字を合わせることもシステム上は可能なのです。
しかし、現実問題として、この選択的夫婦別姓の議論は女性の問題として扱われているじゃないですか。
確かにそうですね。
片方の性別の問題として扱われている段階から、急に苗字は両方とも別々で良いよね、というのはちょっと流れが早すぎる気がするんです。
なので、僕は選択的夫婦別姓を実現する前に、男性が女性側の苗字に合わせることも当たり前の世の中にすることが前段階として必要だと思います。
一理ありますね。
その前段階がないと、一気に飛びすぎていて、そりゃ反対する人も多くなりますよ。
それこそ年齢が上の方たちは「今の状況が当たり前だ!」と言って、跳ね除けてきたわけですからね。
男性が女性側の苗字に合わせるのも普通という社会的風潮を前段階として形成するべきという意見は分かりました。
でも、それはどのように実現するんですか?
その点に関して、以前面白い意見をTwitterで拝見しました。
それは、結婚の際、苗字を決めるときには「レア度バトル」(※1)を行うというものでした。Shun君はこの意見をどう見ますか?
(※1)苗字レア度バトル
面白そうですね。
ですよね。
例えば、Shun君の興梠という苗字は日本全体で見ると、かなり珍しい部類に入ると思います。
それなのに、もし田中さんと結婚して、苗字を田中に変えてしまったら、ただでさえ少ない興梠がより減ってしまうわけです。これは非常にもったいないことですよね。数少ない苗字というのはそれだけで一定の文化的価値があると思うんです。
その通りだと思います。
その価値を失わせないためにも、レア度が高い方が苗字を取ると決めてしまえば、男性だからとか女性だからという面倒な領域から一歩抜け出せると思うんですよね。
すごく興味深い意見ですよね。
本当に社会が客観的に捉えられるようになるかもしれません。
今この性別という指標による議論が選択的夫婦別姓という問題をややこしくしていると思うんですよ。
日本社会というのは特に“固い”ですから、風潮的な部分からまず変えていかないといけないでしょう。
なので、この苗字レア度バトルというのはそうした前段階的な空気作りとして非常に良い政策かなと思います。
ただ・・・やってくれなそうですね。
ですね・・・。
でも、僕はこの「苗字レア度バトル」って本当に面白いと思うんですよね。珍しい苗字の人に、バレンタインのチョコが集まったりしそうじゃないですか(笑)
確かに!
漫画のようですが、苗字争奪戦が起きるかもしれません。
あの人の名字がかっこいいから、結婚したい!みたいなね?(笑)
そうですそうです。
ところで、苗字のレア度というのは具体的にどう定めるんですか?
単純に「人数」の指標を用いればいいと思います。日本に10人しかいない苗字の人と日本に100,000人いる苗字の人が結婚したら、10人の方に揃えましょう、といった感じで。こうすれば、苗字の多様性も実現できると考えています。
なんだか『リアル鬼ごっこ』を思い出しました(笑)
懐かしい(笑)
まあ、そういった制度が、選択的夫婦別姓のクッション段階として実現できたらいいですよね。
そうですね。
これから日本の人口はどんどん減っていくわけじゃないですか。
2100年までには半減してしまう、とも言われています。苗字というのは昔の人が編み出したものであって、一種の作品とも取れます。
やはりこうした価値のあるものが継ぐ人がいなくなることで消滅してしまうのは非常にもったいないと僕は思います。全員が似たり寄ったりでは面白くないよねってことです。これを実現してくれる政治家が出てきたら秒で投票するんですがね。
中国や欧米諸国…海外の夫婦別姓の現状とは?
Shun君が、選択的夫婦別姓に賛成である理由の三つ目は「諸外国では夫婦別姓が認められていることが多いから」でしたね。
ありきたりではあるんですがね。
ただ、中国をはじめとした他のアジア圏は、原則的に夫婦別姓が可能ですし、アメリカも苗字について定めた法律が特にあるわけではないので、みんな自由にやっていることが多いです。
世界的なスタンダードは「夫婦別姓OK」というわけですね。
日本の場合は、1891年の明治の時代に成立した民法によって、夫婦別姓のシステムが定められました。
僕自身、明治時代の法律はもうさすがに古くなってきているのではないかと思います。
時代の流れに合っていないというのは、その通りかもしれません。
そう思います。
ただ僕は、海外では別姓がスタンダードだからと言って、それをすぐに日本に適用しようというのは問題だと思っています。
例えば、夫婦別姓が普通に行われているヨーロッパ諸国では、ダブルネームが可能じゃないですか。
そうですね。
昔からダブルネームという文化がある国々は、簡単に夫婦別姓が実現できるはずです。しかし、日本にはそうした文化がありません。
田中さんと鈴木さんが結婚して、田中鈴木という姓を名乗るのは不可能なのです。そもそも発音が難しいですし、漢字のせいで表記もややこしくなってしまいますからね。
アルファベットとは、また話が違ってきますからね。
そうですよね。
もし、日本でダブルネームをやれるのであれば、それも夫婦別姓を実現するための緩衝材になるとは思います。
やっぱり、ダブルネームにしろ、苗字レア度バトルにしろ、日本はそうした前段階を一気に飛ばして、選択的夫婦別姓を可能にしようとしているわけですから、そりゃこんだけ反対運動おきますよね。
忘れられがちな「子供の視点」
中国に精通しているShun君にお聞きしたいことがあります。
なんでしょう。
中国は、基本的に夫婦別姓がOKの国だと思いますが、子供のせいに関しては何か決まりはあるんですか? 父と母のどちらに揃えるとか。
結局、ほとんどのケースではお父さんに合わせることが多いですね。
そうなんですね。
僕は、子供の苗字をどっちに揃えるかっていう問題でも揉め事が起きる気がしています。中国のケースで考えると、別姓を選択した場合、基本的に母親だけが家庭の中で違う苗字を抱えていることになりますよね。
そういうことだね。
やっぱり、そうした状況では少なくない疎外感を感じてしまうと思うんですよね。
それはあるね。
僕はこの部分を非常に懸念しています。
中には、子供が20歳になるまでにどちらかの苗字を選択できるシステムにすればいいと主張する者もいます。ただ、これって自分がその状況に置かれてないから言える、みたいなところありません?
確かにね。
同じ家族の中で、両親は違う苗字を抱えていて、子供はどっちを取りますかってなればそりゃ家庭不和生まれるよね。そうした点において、子供という観点が外れてしまっている議論が多いなと感じています。
Shun君はこの部分に関して、こうしたらいいのではみたいな策はありますか?
結局は「慣れ」だと思います。
なるほど。
今この凝り固まった状況から動き出そうとしているから、よくないのではという懸念が噴出しているが、いざ夫婦別姓が実現してしまえば、大したことではないということですね。
そうだと思うんですよね。
むすびにかえて
ここまで激論を交わしてきたわけですが、現状の日本で急に選択的夫婦別姓を実現するのは難しいと分かりました。
その解決策としては、重ね重ねになりますが「ダブルネーム」や「苗字レア度バトル」といった制度によって、苗字の問題を性別の問題から抜け出させる。そうした前段階を経て、選択的夫婦別姓を最終的に実現させる。ここらへんが折衷案になりそうですかね。
そうですね。
最後に付け加えておきたいんですが、最近この夫婦別姓に関して驚きのニュースが出回っていました。政府与党である自民党も、当然この選択的夫婦別姓の問題を議論しているわけですが・・・
その会議がなんと男性だけで構成されているというのです。
まじか・・・
この問題がどういう方向に落ち着くにせよ、議論の場がオープンじゃない時点で、一民主主義国家としてどうなのかなと思いますよね。こんなことは悲しくて言いたくありませんが、まずはフラットは議論の場を作るというところからスタートしなければいけません。そういうところから徐々に変えていって、多くの人が納得できる結果に落ち着くことを祈るばかりです。
そうですね。
ということで、今回の対談はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
ありがとうございました。
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※本記事では、田中井大歩氏が撮影した写真を許諾を得て使用しています。
◉田中井氏のインスタグラムはこちらから◉
https://www.instagram.com/hiromutanakai/
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