【本記事を読むと分かること】
・世間に魅力が伝わりきっていないICU(国際基督教大学)の雰囲気が分かる!
・学長の岩切正一郎氏に直接インタビューしているので、絶対安心の正確情報!
・ICUの現役生/OPには、学長の意外な側面や進行中のプログラムが知れるかも・・・?
“早慶上理ICU“
この大学区分の中でも、最後のICU(国際基督教大学)は知る人ぞ知る大学だ。
今回の「スペシャ・リスト」では、ICUの学長・岩切正一郎氏に直接インタビューを敢行。不思議のベールに包まれた大学の、魅力的な真実が明らかになる。
そして、ICUが向かう未来とは・・・?
(文=仁大ばなし)
岩切学長!夢はありますか?
岩切先生、本日はわざわざ貴重なお時間をとっていただき、ありがとうございます!
いえいえ。
最初の質問は、僕が先生にとても聞きたかったことなんです。
なんでしょう。
岩切先生!
夢はありますか?
夢ねぇ・・・。夢の定義にもよるんだけどね・・・。
残りの人生で「これは成し遂げたい!」っていうものがあれば教えていただきたいです。
そうなると、やっぱり「演劇の翻訳」になるかなあ。
良い作品なんだけど、なかなか上演されていないものも結構多いんだよ。
ただ、こういうのは演出家やプロデューサーの意向もあるから、かなり偶然の産物ではあるんだけどね。
結局のところ、やりたいのは、まだ世に出ていない良作の演劇に関わって、素晴らしいものを生み出していくってことだね。
かなり演劇に心血を注いでいらっしゃるんですね。
岩切先生は、ご自身で詩も書かれていると思うんですが、演劇と詩の関連性っていうのは深いんですか?
演劇と詩は、ジャンルは違えど、「声に出して表現する芸術」なんだよね。
小説は声に出して読まないでしょ?
確かにそうですね。
詩は、「朗唱」という文脈から来ているから、声に出すことでより大きな魅力を感じられるんだよ。
多義的な「詩」と一義的な「お知らせメール」
先生は詩を書かれていますが、詩は十人十色の受け取り方ができる文学だと思います。
一方、岩切先生は学長として、重要事項を伝えるため、一義的なお知らせメールの文面も考えなくてはいけないですよね。
無数の解釈ができる詩と、意味を一つに絞らなければいけないお知らせメールというのは違いが大きいと思いますが、そこでの苦労はないですか?
それはないね。
公示ってのは、大学公式のメッセージだから、決まったことを淡々と知らせるだけなんだよ。
そうなんですね。
でも、岩切先生は、お知らせメールにも文学の引用を付ける(※1)など、「淡々」で終わらせない工夫をされていますよね。
そうだね。
まあ、あんな引用なんてくっつけなくてもいいんだけど。
でも、少し関連している文学のフレーズを、必然性はないんだけど付け加えているんだよね。
今の時代や状況を、別の角度から考えるヒントになればいいかなあと思ってさ。
最近は、コロナ禍のせいで暗いニュースが多いです。
そんな中で、岩切先生のメールからはその引用の効果なのか、温かみや柔らかさを感じられるんですよね。
メールの引用は、個人の趣味で、オリジナリティーを出させてもらっているって感じだね。
確かにあのメールスタイルは唯一無二ですね。
以前、あのお知らせメールの文面作成にもかなりの時間をかけているとおっしゃっていましたが、それは本当ですか?
そうそう。
やっぱりお知らせってのは、大学が正式に出す文章だからね。
最初のドラフトを僕が作ったあと、皆でチェックしあうんだよ。
大変なプロセスを経ているんですね・・・
お知らせメール作りは、かなりの共同作業なんだよね。
昔は、紙で印刷して回したりしてたから、結構大変だったよ。
今では、Google Documentで簡単に共有できちゃうけど。
デジタル時代の恩恵ですね・・・
詩に潜む「二項対立」とICUの「クリティカルシンキング」
岩切先生の詩を読んでいて感じたのは、白と黒のような二項対立的な要素が頻繁に登場するということです。
「二項対立」に関して、何か特別な意識というのは、あるんですか?
それはあるかもしれない。
まず、大前提に「現実と夢」っていうのがあるからね。
なるほど!
あとは、時間的なものと永遠のものとか。
そういう対立は頭の中にあるかもしれないね。
僕が感じたのは、そうした二項対立の考え方と、「多角的かつ批判的」というICUのアカデミックスタイルは相性が悪いのではないかということです。
例えば、授業内で「白か黒か」という問いを提示されたら、どうしても「片方が正しく、片方は間違い」みたいな思考に陥ってしまうような気がします。
そのあたりは、どうお考えですか?
対立というより、「二つのあり方」みたいなことなんだよね。
その間を行ったり来たりしながら、溶け合って別のものになっているみたいな認識かな。
0か100に振り切るのではなく、その間を探すということですね。
そうだね。
そう考えると、ICUのリベラルアーツ観との共存もできると思うよ。
ICUは色々なイベントが行われすぎていて把握しきれません!
先日のカフェ・ポニーで、岩切先生はICUに果樹園を作るという話をされていましたね。
実は、僕はそれ初耳だったんです・・・
このように、ICUは大学主導・学生主導関係なく、たくさんのイベントや催しが行われすぎていて、網羅しきれません。
何か対策はありますか?
確かにそうだね。
全部の一覧があるわけじゃないからさ。
事後的に知るイベントもたくさんあるよね。
イベント情報をまとめたページとかがあるといいのかな。
そうですね。
公式のプラットフォームがあると、学生側もやりやすいと思います。
ただ、誰が管理するのかっていう話になっちゃって、結構大変そうだね。
Facebook とか Instagram に皆が投稿できるようにすればいいのかもね。
僕は、ICUのYouTubeチャンネルを活用したらいいと思っています。
学生がイベントの告知動画を作ってきて、公式チャンネルにアップするみたいな。
登録が必要でクローズドなSNSよりも、オープンなYouTubeの方が効果はありそうです。
イベント情報に関しても、学生がやってくれるとありがたいんですけどね。
情報整理クラブみたいなの作ってさ。
確かに!
サークルがあるとスムーズに進むかもしれませんね。
学生との交流とピザ窯プロジェクト
岩切先生は、以前「カフェ・ポニー」という学生と交流する場を設けていましたね。
先生ご自身は、やはり「学生との交流」は大事にされているんですか?
まあ、学長になる前は、教授として学生と一緒に考えていく日々を過ごしていたわけだよね。
とりわけ、去年はコロナで人との交流が難しかったから、カフェ・ポニーのようなイベントはずっと開きたいと思っていたんだよ。
なるほど。
学生との交流の中で、岩切先生にとって学びになることもあるんですか?
今の若者が何を考えているのかを知るのはすごく面白いんだよね。
話は変わるけど、今、寮の学生たちとピザ窯を作ろうっていうプロジェクトが動いてて・・・
ピザ窯🍕??!!
そうそう。ピザ窯。
勉強とは関係なく、皆で集まって、飲んだり、食べたり、喋ったりしながら進められたらと思ってるんだ。
確かにオンライン授業になって、講義だけになってしまいましたからね。
学生たちは、ピザ窯作りのような余暇的イベントを求めているかもしれません。
学生との交流で思い出したけど、僕は授業でもこういうスタイルだったね。
具体的には何をやっていたんですか?
僕は文学を教えていたから、理論を学ぶのはもちろん大切だけど、大前提に作品・テキストがあるんだよね。
小説や戯曲だと、作中にお菓子が出てきたりするわけ。
それで寮に住んでいる学生たちが、そのお菓子を作って持ち寄ってくれて、一緒に食べるなんてことはやってたかな。
文学だけでなく、お菓子も味わうってことですね。
ICUのスペースを有効活用したい!野外フェスに映画館?!
交流の場として、この前ICU構内に出来たO’s cafeは非常に面白いと思っているんだ。
まだスクリーンも残してあるから、映画会を開いたりできそうだよね。
確かに!
雰囲気も良いですし!
教授や学生が好きな映画を持ち寄るってのも面白そうだね。
学生たちはそういうコミュニティを渇望しているでしょうね。
理学館の中身が移転して空っぽになったら、O’s cafeのようなものをもう2, 3個作りたいと思ってるんだ。
教授たちはいろいろな趣味を持っているから、それを披露する場にするのもアリかもね。
めっちゃ良いアイデアじゃないですか!
教授は授業ではできないことをして、学生たちはそれを単位を気にせず楽しむ。こんな桃源郷ないですよ!
かもね。
サックスを吹くのが好きな教授が20分くらいリサイタルやったりとか、活用法はいろいろありそうだよ。
それとICUのスペース活用に関して付け加えると、この前、物理の歴舟先生と学生たちが体育館の壁を使ってプロジェクションマッピングをやったんだよね。
そんなイベントがあったんですね・・・!
そうそう。
僕は、歴舟先生たちのプロジェクトがきっかけで、体育館周りはとても面白そうなスペースだと思うようになったんだよね。
ちょうど芝生が広がってるし、階段みたくなっているところで野外ライブなんてのもアリなんじゃないかな。
フェス感があって最高ですね。
確かにICUは広大な土地がありますが、中々上手く使えていない所が多いように感じます。
教授や学生からアイデアを募るなどしたら、面白いことがたくさん出来そうです。
ICUの知名度低い問題をどう考えてますか?
ズバリ、岩切先生は「ICUの知名度低い問題」をどう考えていますか?
ん〜・・・
「知る人ぞ知る」なら良いんだけど、「知られざる」になっちゃうと困るから、広報活動はいろいろとやっているよ。
現役学生数や卒業生数っていう物理的な部分も、知名度には大きく関係してるとは思うんだ。
そこは仕方のないところだけど、優秀な人には知っていてほしいっていうのは感じるね。
届くべき人には届いてもらわないとダメってことですね。
そうだね。
・国際的にものを考えている。
・英語が好きで世界に羽ばたいていきたい。
・リベラルアーツに惹かれている。
こうした学生たちにICUを見つけてもらえないのはやっぱり悲しいからさ。
受験雑誌とかのインタビューを受けると、だいたい「リベラルアーツの考えはそこまで浸透してませんよね」とか言われちゃうわけ。
アーツ(arts)が「芸術」って勘違いしている人も多いからさ。
本当は「学問」という意味なんだけどね・・・
一から説明しないといけないほどに、リベラルアーツ自体の知名度も低いんですね。
だから、学生たちみんなが活躍してくれればいいんだよ。
なるほど!
ICU現役生/OPの皆さん、宜しくお願いします🙇♂️
ということで、このあたりでお時間ですので、インタビューを終了させていただきます。
本日は本当にありがとうございました。
ありがとうございました。
編集長まとめ:ICUは一つの「演劇」である
今回の「スペシャ・リスト」では、ICU学長の岩切正一郎氏をお招きしました。
ICUを知らなかった人、興味がある人、現役生やOPの方々。どんな方も楽しめたインタビュー記事だったのではないでしょうか。
私が特に印象に残ったのは「学生が活躍してくれればいいんだよ」という言葉です。
私はこれを聞いて、ICUは一つの「演劇」なのだと確信しました。
学生一人一人が個性的な登場人物で、一つのストーリーを形成していく。この演劇は誰もが知る有名作ではないけれど、根強い理解者は数多くいる。
こう考えると、冒頭の「まだ世間に出ていない良作の演劇に関わりたい」という岩切先生の夢は、ICUの今後とリンクしていると言えます。
ICUという演劇を経験した者たちは、「世界」という大舞台でも大胆に踊ることができるでしょう。
私もこの演劇の中で存在感のある登場人物になれるよう、邁進してまいります。
岩切先生、今回はわざわざ貴重なお時間をとっていただき、本当にありがとうございました。
(文=仁大ばなし)
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※本記事では、田中井大歩氏、一ノ瀬氏が撮影した写真を許諾を得て使用しています。
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